水景デザイナーとして手掛けてきた水景の数々。考えてみると、それらに自らの意志で名前をつけたことは今まで一度もありません。
こちらの水槽には他ならぬ思い入れがあり、全身全霊で取り組みました。
作品名は、『軌跡（奇跡）』です。

ピンチの時こそチャンスは眠っている。誰しもが一度は耳にする言葉かもしれません。
その言葉を聞き流すのか、更なる飛躍とするのかは、それを目の当たりにした人にしか理解出来ないことなのだと思います。
島田ご夫妻とのご縁は、未熟だった自分が成長させて頂いた貴重な経験です。
担当者として、2年程たった頃にそれは起こります。「3・11東日本大震災」。
想定外の水漏れにより、水槽は中断せざるを得ませんでした。水が消えた水槽だけが残り、終わりなき先の見えない状況に自分自身との戦いが始まりました。
島田先生との繋がりを無くすまいと、白化した岩・乾いた砂だけの空間に毎週飾り付けを施し続けた10ヵ月。当時の記憶は、今も忘れられない自分の原点となっています。
そこからは、『奇跡』の連続でした。

医院の内装リニューアルを機に、島田先生は言って下さいました。
「今まで悪かったね。そろそろ水槽を再開させようと思っているんだよ」
長く暗い道のりに光明が射し込まれた瞬間でした。
その後、2本目のフレグランス水槽と奥様である、みき歯科医院へのサンゴ水槽。
改めてアクアリウムの可能性と魅力に驚かされます。
そして、その結果を紡いだのは人と人との繋がり、思いやりの気持ちを大事にするTOJOの『軌跡』に他ならないのだと気づかされました。
島田先生、みき先生。
本当に素敵な笑顔と称賛の言葉をありがとうございます。
「今までこんな水槽見たことがない。本気を見せてもらったよ！」
心から嬉しい言葉でした。

作品に施した２つのアーチは、島田ご夫妻とTOJOの繋がりが今後も続いていくようにとの思いを込めています。
この作品を生み出すことに御協力頂けましたこと、心より感謝しております。
私がTOJOの存在を知り今に至るのは、TV放映された『ソロモン流』を見たことが始まりです。自らの生き方を模索し、悩んでいた最中目に映った光景は、二人の恩人が作り出してきた軌跡（奇跡）。
次は自らが新たな『軌跡』を生み出していく側である責任と、更なる『奇跡』の続きに期待は膨らんでいくばかりです。